
日本RWD学会について
設立趣意
1. 背景
医療・ライフサイエンス分野では、診療記録、健診・検査結果、ゲノム情報、ウェアラブル機器による計測データ、PHR(Personal Health Record)など、多様なRWDの利活用が急速に進展しています。これらのデータは、疾患の予防、早期発見、診断、治療、創薬に加え、健康経営や地域医療計画など、幅広い領域における意思決定を支える重要な基盤となっています。
わが国においても、自治体、医師会、大学、企業、研究機関が連携し、全国規模のデータ収集および活用基盤の整備が進められています。バイオバンクや地域コホートに代表される取り組みが各地で展開されており、例えば沖縄県や青森県弘前市などでは、健診・検査データ、ゲノム情報、住民の同意に基づくPHRなど、個人単位で長期的に追跡可能なRWDが蓄積され、次世代の医療や創薬を支える堅牢な基盤が構築されつつあります。
しかしながら、RWDは多様な主体によって収集・管理されているため、データベースの構造や標準化、利活用のルールなどにおいて統一性を欠き、横断的な連携や二次利用の実効性を確保するには至っていません。その結果、蓄積されたデータが臨床研究、医療政策、産業応用といった社会実装へ十分に活用されておらず、研究者や企業が利活用を推進する上での大きな障壁となっています。さらに、ELSI(Ethical, Legal and Social Issues:倫理的・法的・社会的課題)への対応や、データ品質および解釈における実務上のばらつきも、重要な課題となっています。
2. 目的と意義
これまで、RWDに関する議論や連携は、特定の疾患領域や地域、個別の研究プロジェクトやワーキンググループ単位で行われてきました。しかし、RWDの活用が医療、創薬、行政、産業といった多様な領域にまたがる中で、専門分野を越えた知見の集約や共通課題の整理、ELSIへの対応について横断的かつ統合的な議論を行う場が不足しています。持続可能で実効性のあるRWDの利活用には、分野横断的な視点と多様なステークホルダーが参画できる中立的かつ学術的なプラットフォームの構築が不可欠であり、そうした枠組みの整備が急務となっています。そのため、本学会は以下に掲げる目的をもって設立されました。
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RWDの収集・統合・利活用に関する研究および技術の発展を支援すること
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医療・公衆衛生・創薬・ELSIなど分野横断的かつ統合的連携と交流を促進すること
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RWD利活用におけるELSI対応と社会的合意形成に向けたガイドラインを提案すること
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地域医療データの国際展開とグローバルな連携を促進多様なRWDの提供および活用に関する状況把握と環境整備を推進すること
3. 活動方針
本学会は、医療・情報・ELSIを中心に多様な専門性を有する研究者や実務者に加え、産業界や行政機関の関係者が一堂に会し、RWDを起点とした研究、社会実装、人材育成を推進する産地学官ネットワークの構築を目指します。具体的には、以下の活動を想定しています
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年次学術大会およびシンポジウムを開催すること
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RWDに関する実証研究・事例共有のための研究会・分科会を設置すること
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国際的な学会や研究会と連携することや共同セッションを開催すること
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RWDカタログを整備し、利活用の効率と実効性の向上させること
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RWDの整備とバリデーション機能の構築を推進すること
4. 今後の展望とお願い
RWDは、将来の医療および社会を支える中核的な情報基盤の一つです。その公正かつ科学的な利活用を推進するためには、専門分野を越えた連携と多様な知見の統合が不可欠です。本学会は、こうした時代の要請に応ずるべく、持続可能な活動基盤の構築を通じて、次世代の医療、創薬、さらには社会的課題の解決に貢献することを目指しています。